令和4年度における労災補償業務の運営に関する通達が発出されています

厚生労働省ホームページに、「労災補償業務の運営に当たって留意すべき事項について」が掲載されました。

これは、都道府県労働局長宛に令和4年度における労災補償業務の運営における留意点について発出されたもので、次の4つの事項が挙げられています。

●新型コロナウイルス感染症等への迅速・的確な対応
●過労死等事案などの的確な労災認定
●迅速かつ公正な保険給付を行うための事務処理等の徹底
●業務実施体制の確保および人材育成、デジタル化の推進

個別具体的な業務に関するものとしては、主に次のような内容となっています。

【新型コロナウイルス感染症に係る労災保険給付】
・労災請求事案については速やかに調査に着手するとともに、集団感染事案等の調査の効率化による処理の迅速化を図るなど、業務により感染した労働者が迅速かつ公正に労災保険給付を受けられるよう的確に対応する
・さらに、感染性が消失した後も症状が持続し(罹患後症状があり)、呼吸器や循環器、精神・神経症状等に係る症状がみられる場合があることから、厚生労働省の「新型コロナウイルス感染症 診療の手引き 別冊罹患後症状のマネジメント(暫定版)」等を参考に医師の意見を確認し、療養や休業が必要と認められる場合には、労災保険給付の対象となることに留意する

【労災認定基準の適切な運用】
・令和3年9月14日付けで「血管病変等を著しく増悪させる業務による脳血管疾患及び虚血性心疾患等の認定基準について」により改正を行ったところであるから、これに基づき、適切に対応すること
・特に、労働時間の長さは、業務量の大きさを示す指標であり、また、過重性の評価の最も重要な要因であるので引き続き適切に評価するとともに、労働時間のみで業務と発症との関連性が強いと認められる時間外労働の水準には至らないがこれに近い時間外労働に加えて一定の労働時間以外の負荷が認められるときには、業務と発症との関連性が強いと評価できることを明確にしたことを踏まえ、労働時間以外の負荷要因については、新たに追加・拡充をした項目を含め、十分に調査し検討を行うこと
・心理的負荷による精神障害の認定基準については、「精神障害の労災認定の基準に関する専門検討会」において検討を行っているところであり、検討状況について注視願いたい

【建設アスベスト給付金制度の周知】
・労災請求時などに建設業務により石綿ばく露した事案で本給付金の対象となると思われるものを把握した場合には、建設アスベスト給付金制度に関するパンフレットを交付することなどにより制度の周知を行うこと。周知に際しては、併せて、給付金の請求に先んじて労災の請求を行うよう、勧奨すること

【請求人等への懇切・丁寧な対応】
・請求人等からは、請求後に長期間を経過しているが、対応状況がわからず、不安になっている旨の問合せが多数、寄せられていることから、引き続き、請求書受付後3カ月を経過した事案については、請求人等に対し、処理状況等を連絡するとともに、その後も概ね月1回、定期的に連絡することを徹底すること
・過労死等事案等の不支給決定を行った場合には、当該不支給決定に対する請求人の納得性を高めるため、支給要件の概要、当該不支給決定理由のポイント、審査請求手続等について、請求人にわかりやすい説明を行うこと

【障害(補償)等年金を受ける者の再発に係る取扱い】
・平成27年12月22日付け基補発1222第1号「障害(補償)年金を受ける者が再発により傷病(補償)年金又は休業(補償)給付を受給する場合の事務処理上の留意点について」により指示しているところであるが、いまだ適切さを欠く状況がみられる
・障害(補償)等年金を受ける者が再発した場合、障害の状態によっては、再発により療養する期間について、傷病(補償)等年金の支給要件を満たす可能性があることから、改めて、当該通達に基づき適切に事務処理を行うこと
・再発が多いと考えられるせき髄損傷に係る相談対応にあたっては、リーフレット「せき髄損傷に併発した疾病の取扱いについて」を使用することなどにより、懇切・丁寧な説明に努めるとともに、リーフレットに掲げられていない併発疾病であっても、個々の事案ごとに因果関係を判断し、予断を持った対応は行わないこと

【第三者行為災害に係る事務処理】
・令和2年4月1日施行の民法改正を反映した時効の管理については、「第三者行為災害事務取扱手引(令和2年4月)」により適切に実施すること。特に、民法に基づく損害賠償請求権を行使することができる期間は「3年以内」から「5年以内」に改正されたが、自賠責保険に対する損害賠償請求権は自賠法に基づき「3年以内」のままであることに留意すること

【行政事件訴訟の敗訴を踏まえた対応】
・労働者性や労働時間が争点となった事件について、敗訴した事件が散見されることから、次の点に留意すること
 (1)労働者性については、使用従属性の判断が重要であり、その判断にあたっては判断要素を総合的に勘案して行うべきところ、役員として登記されていること等の形式的な事実のみをもって判断が行われており、結果として敗訴となっている。労働者性を否定する場合は、先入観にとらわれず、実態に即した判断を行えるよう、給付事務手引を参照のうえで監督部署と連携し、十分な裏付け調査を行うこと
 (2)労働時間については、タイムカードや業務日報など、客観的に労働時間を判断できる資料がない場合も少なくなく、また、いわゆる持帰り残業や休憩時間中の業務の判断は困難であるが、訴訟においては、実態を踏まえた判断が行われ、敗訴になることが多い。労働時間の判断にあたっては、労働時間質疑応答事例集を参照し、適切な認定に努めること

詳細は、下記リンク先にてご確認ください。

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労災補償業務の運営に当たって留意すべき事項について(令和4年2月15日労災発0215第1号)
https://www.mhlw.go.jp/hourei/doc/tsuchi/T220216K0030.pdf