令和7年6月から職場における熱中症対策が義務化されます

 厚生労働省より、「労働安全衛生規則の一部を改正する省令」(令和7年4月15日厚生労働省令第57号)が公布されました。
 近年では職場での熱中症により、一年間で約30人が亡くなり、約1,000人以上が4日以上仕事を休んでいます。そのため、熱中症のおそれのある作業を対象に罰則付きで、早期発見や重篤化防止に向けた整備等が義務付けられることとなりました。
 今回は、義務化の内容や令和7年5月1日から始まる「STOP!熱中症 クールワークキャンペーン」に向けてすべきことを取り上げます。

義務化の内容について

 改正により、熱中症のおそれのある作業(※)を対象に、次の3つが罰則付きで義務付けられ、令和7年6月1日より施行されます。
WBGT(湿球黒球温度)28度以上または気温31度以上の作業場において行われる作業で、継続して1時間以上または1日当たり4時間を超えて行われることが見込まれるものが対象となります。

①早期発見のための体制整備
②重篤化を防止するための措置の実施手順の作成
関係作業者への周知

 また、厚生労働省では令和7年5月1日からの「STOP!熱中症 クールワークキャンペーン」に先立ち、事業者がすべきことをチェックリストにまとめたリーフレットが公開されています(日本語、英語、中国語、韓国語、インドネシア語、タガログ語、ベトナム語)。

WBGT値(暑さ指数)活用

*WBGT基準値とは
 暑熱環境による熱ストレスの評価を行う暑さ指数のことをいいます。

*WBGT基準値の活用方法
 身体作業強度(代謝率レベル)とWBGT基準値を比べ、基準値を超える場合に下記の措置を行う必要があります。
・冷房等により当該作業場所のWBGT基準値の低減を図ること
・身体作業強度(代謝率レベル)の低い作業に変更すること
・WBGT基準値より低いWBGT値である作業場所での作業に変更すること

➤それでも基準値を超えてしまうときには、下記の熱中症予防対策を行う必要があります。

熱中症予防対策

1.作業環境管理
(1)WBGT値の低減等
 屋外の高温多湿作業場所においては、直射日光並びに周囲の壁面および地面からの照り返しを遮ることができる簡易な屋根等を設けること。
(2)休憩場所の整備等
 高温多湿作業場所の近隣に冷房を備えた休憩場所または日陰等の涼しい休憩場所を設けること。

2.作業管理
(1)作業時間の短縮等
(2)暑熱順化
 高温多湿作業場所において労働者を作業に従事させる場合には、暑熱順化(熱に慣れ当該環境に適応すること)の有無が、熱中症の発症リスクに大きく影響することを踏まえ、計画的に暑熱順化期間を設けることが望ましいこと。
(3)水分および塩分の摂取
 自覚症状の有無にかかわらず、水分および塩分の作業前後の摂取および作業中の定期的な摂取を指導すること。
(4)服装等
 熱を吸収し、または保熱しやすい服装は避け、透湿性および通気性の良い服装を着用させること。
(5)作業中の巡視

3.健康管理
(1)健康診断結果に基づく対応等
(2)日常の健康管理等
 睡眠不足、体調不良、前日陶の飲酒、朝食の未摂取等が熱中症の発症に影響を与えるおそれがあることに留意の上、日常の健康管理について指導を行うとともに、必要に応じ健康相談を行うこと。
(3)労働者の健康状態の確認
(4)身体の状況の確認

4.労働衛生教育
 労働者を高温多湿作業場所において作業に従事させる場合には、適切な作業管理、労働者自身による健康管理等が重要であることから、作業を管理する者および労働者に対して、あらかじめ次の事項について労働衛生教育を行うこと。
(1)熱中症の症状
(2)熱中症の予防方法
(3)緊急時の救急処置
(4)熱中症の事例

準備期間(4月)にすべきこと

・労働衛生管理体制の確立
➤事業場ごとに熱中症予防管理者を選任し、熱中症予防の責任体制を確立
・暑さ指数(WBGT)の把握の準備
➤JIS規格に適合した暑さ指数を準備し、点検
・作業計画の策定
➤暑さ指数に応じた休憩時間の確保、作業中止に関する事項を含めた作業計画を策定
・設備対策の検討
➤暑さ指数低減のため簡易な屋根、通風または冷房設備、散水設備の設置を検討
・休憩場所の確保の検討
➤冷房を備えた休憩場所や涼しい休憩場所の確保を検討
・服装の検討
➤透湿性と通気性の良い服装を準備、送風や送水により身体を冷却する機能をもつ服の着用も検討
・教育研修の実施
➤管理者、労働者に対する教育を実施
・緊急時の対応の事前確認
➤緊急時の対応(異常時における連絡体制や対応手順等)を確認し、関係者に周知

キャンペーン期間(5~9月)にすべきこと

【STEP1】暑さ指数の把握と評価
 JIS規格に適合した暑さ指数計で暑さ指数を随時把握(地域を代表する一般的な暑さ指数(環境省)を参考にすることも有効)

【STEP2】測定した暑さ指数に応じて以下の対策を徹底
・暑さ指数の提言
➤準備期間に検討した設備対策を実施
・休憩場所の整備
➤準備期間に検討した休憩場所を設置
・服装
➤準備期間に検討した服装を着用
・作業時間の短縮
➤作業計画に基づき、暑さ指数に応じた休憩、作業中止
・プレクーリング
➤作業開始前や休憩時間中に深部体温を下げる
・水分・塩分の摂取
➤水分と塩分を定期的に摂取(水分等を携行させる等を考慮)
・暑熱順化への対応
➤熱に慣らすため、7日以上かけて作業時間の調整
 ※新規入職者や休み明け労働者は別途注意すること
・健康診断結果に基づく対応
➤次の疾病を持った方には医師等の意見を踏まえ考慮
 ①糖尿病、②高血圧症、③心疾患、④腎不全、⑤精神・神経関係の疾患、⑥広範囲の皮膚疾患、⑦感冒、⑧下痢
・日常の健康管理
➤当日の朝食の未摂取、睡眠不足、前日の多量の飲酒が熱中症の発症に影響を与えることを指導し、作業開始前に確認
・作業中の労働者の健康状態の確認
➤巡視を頻繁に行い声をかける、「バディ」を組ませる等労働者にお互いの健康状態を留意するよう指導
・異常時の対応
➤あらかじめ作成した連絡体制や対応手順等の周知徹底
 少しでも本人や周りが異変を感じたら、あらかじめ作成した連絡体制や対応手順等に基づき適切に対応
 ※必ず一旦作業を離れ、全身を濡らして送風するなどにより身体を冷却
 ※症状が回復しない場合は躊躇なく病院に搬送する(症状に応じて救急隊を要請)

重点取組期間(7月)にすべきこと

・暑さ指数の低減効果を再確認し、必要に応じ対策を追加
・暑さ指数に応じた作業の中断等を徹底
・水分、塩分を積極的に取らせ、その確認を徹底
・作業開始前の健康状態の確認を徹底、巡視頻度を増加
・熱中症のリスクが高まっていることを含め教育を徹底
体調不良の者に異常を認めたときは、躊躇することなく救急隊を要請

 

詳細は、下記リンク先にてご確認ください。
安全衛生 熱中症 暑さ指数
職場における熱中症対策の強化について(リーフレット)
職場における熱中症対策の強化について(パンフレット)
労働安全衛生規則の一部を改正する省令(令和7年4月15日厚生労働省令第57号)
STOP!熱中症 クールワークキャンペーン/厚生労働省|厚生労働省
令和7年「STOP ! 熱中症 クールワークキャンペーン」リーフレット(日本語)
令和7年「STOP!熱中症 クールワークキャンペーン」実施要綱

 

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