「無期転換ルール及び多様な正社員等の労働契約関係の明確化に関する考え方と裁判例」が公表されました

 厚生労働省より、「無期転換ルール及び多様な正社員等の労働契約関係の明確化に関する考え方と裁判例」が公表されました。
 裁判例は、いずれも個別の裁判例であり、事案によって異なる判断となる可能性がありますので、ご留意下さい。

無期転換ルール

1. 無期転換前の雇止め等
①無期転換申込権が発生する直前に合理的な理由のない雇止め
*裁判例:公益財団法人グリーントラストうつのみや事件(令和2年6月10日宇都宮地判労判1240号83頁)
➤契約更新について合理的な期待が生じている状況で、無期転換申込権の発生を回避するために雇止めを行った場合、特段の事情がないときは、当該雇止めに客観的合理性・社会的相当性が認められないと判断され得る。
②無期転換申込権発生前に新たに(一方的に)更新上限を設定して上限を理由に雇止め
*裁判例:博報堂事件(福岡地判令和2年3月17日労判1226号23頁)
➤使用者が新たに設定した更新上限のある雇用契約書に労働者が署名押印したことをもって直ちに労働契約を終了させる旨の明確な意思を表明したものとみることは相当でなく、労働者に労働契約を終了させる旨の明確な意思があると認められない場合は、労働契約が合意により終了したとはいえず、更新上限の記載は雇止めの予告と判断され得る。
*裁判例:地方独立行政法人山口県立病院機構事件(山口地判令和2年2月19日労判1225号91頁)
➤契約更新について合理的な期待が生じている状況で、使用者が一方的に就業規則の変更により更新上限を設定した場合には、就業規則の変更の前の段階で契約更新の合理的期待が生じており変更をもって合理的期待が消滅したとは認められないと判断され得る。
③当初の契約締結時から更新上限を設定して無期転換申込権発生前に雇止め
*裁判例:日本通運(川崎)事件
➤当初の契約締結時から更新年限や更新回数の上限を設けることは、それ自体としては直ちに違法になるものでないが、雇用継続を期待させるような使用者側の言動がある等、雇用継続への期待が生じている場合には、当該雇止めは客観的合理性・社会的相当性により判断されることとなる。
④再雇用を約束した上で雇止めをし、クーリング期間経過後に再雇用
クーリング期間経過後に再雇用することを約束して雇止めを行うことは、「有期労働契約の濫用的な利用を抑制し労働者の雇用の安定を図る」という労働契約法18条の趣旨に照らして望ましいものではない。
⑤無期転換申込権が生じる前に派遣や請負を偽装して形式的に他の使用者に切替え
➤無期転換申込権の発生を免れる意図をもって、派遣形態や請負形態を偽装して、労働契約の当事者を形式的に他の使用者に切り替えた場合は、労働契約法18条の趣旨を潜脱するものとして、通算契約期間の計算上「同一の使用者」と解される
⑥無期転換後の労働条件について(一方的に)不合理な「別段の定め」をすることによる無期転換申込みの抑制
⑦無期転換申込みの拒否
⑧無期転換申込権の事前放棄の強要
➤無期転換申込権を行使しないことを更新の条件とする等あらかじめ無期転換申込権を放棄させることは、労働契約法18条の趣旨を没却するものであり、公序良俗に反し、無効と解される
⑨細切れな定年を設定し、無期転換後、数年で定年退職
➤無期転換後すぐに定年が到来するように段階的な定年の定めをすることは、労働契約法18条の趣旨に照らして望ましくない。

2. 無期転換申込みを行ったこと等を理由とする不利益取扱い
 無期転換の申込みをしたことその他無期転換の申込みに関する行為を行ったことを理由として、無期転換申込権の行使を抑制し、無期転換申込権を保障した趣旨を実質的に失わせることとなる解雇その他不利益な取扱いをすることは許されず、そうした解雇や不利益な取扱いは、その内容に応じて労働契約法、民法の一般条項、判例法理等による司法的救済の対象となる。

多様な正社員

1. 労働条件の変更
*裁判例:山梨県民信用組合事件(最二小判平成28年2月19日労判1136号6頁)
➤労働条件変更に対する労働者の同意の有無については、その同意が労働者の自由な意思に基づいてされたものと認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するか否かという観点から判断されるべきである。
*裁判例:東武スポーツ(宮の森カントリー倶楽部・労働条件変更)事件(東京高判平成20年3月25日労判959号61頁)
 裁判例:技術翻訳事件(東京地判平成23年5月17日労判1033号42頁)
➤個別合意による労働条件の変更にあたっては、労働者が変更内容の全体及び詳細について適切に特定・把握し、また、記憶に止めることができるように措置を講ずる必要があるとされたケースがある。
 上記の考え方に加えて、「合意された内容をできる限り書面化しておくことが望ましい」という考えが示されたケースもある。

2. 勤務地、職務、勤務時間についての限定合意
①限定合意と配転命令
*裁判例:滋賀県社会福祉協議会事件(最二小判令和6年4月26日労判1308号5頁)
➤限定合意が認められる場合、当該限定合意に反する配転命令に関しては、労働者の同意がない限り効力を有しないものとされる。
②限定合意と労働者の同意
*裁判例:西日本鉄道事件(福岡高判平成27年1月15日労判1115号23頁)
➤限定合意を変更するための労働者の同意は、労働者の任意(自由意思)によるものであることが必要となる。
③その他(限定合意が認められない場合)
*裁判例:安藤運輸事件(名古屋高判令和3年1月20日労判1240号5頁)
➤限定合意が認められない場合でも、特定の業務に従事することの期待が法的保護に値すると判断されたケースもある。

3. 整理解雇
①勤務地や職務限定と整理解雇の考え方
*裁判例:学校法人奈良学園事件(奈良地判令和2年7月21日労判1231号56頁)
➤整理解雇について、勤務地や職務の限定が明確化されていれば直ちに解雇が有効となるわけではなく、整理解雇法理(4要件・4要素)を否定する裁判例はない。
②解雇の有効性の判断の傾向
*裁判例:ワキタ(本訴)事件(大阪地判平成12年12月1日労判808号77頁)
➤解雇の有効性については、人事権の行使状況や労働者の期待などに応じて判断される傾向にある。
*裁判例:学校法人村上学園事件(大阪地判平成24年11月9日(ワ)第3185号)
➤転勤や配置転換が可能な範囲に応じて、解雇回避努力や被解雇者選定の妥当性等の判断が異なる傾向にある。
③勤務地限定や高度な専門性を伴わない職務限定と整理解雇法理の判断の傾向
*裁判例:シンガポール・デベロップメント銀行(本訴)事件(大阪地判平成12年6月23日労判786号16頁)
 裁判例:全日本海員組合事件(東京地判平成11年3月26日労経速1723号3頁)
勤務地限定や高度な専門性を伴わない職務限定については、整理解雇法理の判断に与える影響は小さく、解雇回避努力として配置転換を求められることが多い傾向が見られる。
*裁判例:フェイス事件(東京地判平成23年8月17日労経速2123号27頁)
高度な専門性を伴う職務限定や他の職務とは内容や処遇が明確に区別できる職務限定については、整理解雇法理の判断に一定の影響があり、配置転換ではなく退職金の上乗せや再就職支援でも解雇回避努力を行ったと認められる場合がある。

4. 能力不足解雇
*裁判例:ブルームバーグLP事件(東京高判平成25年4月24日労判1074号75頁)
➤能力不足解雇について、能力不足を理由に直ちに解雇することは認められるわけではなく、高度な専門性を伴わない職務限定では、改善の機会を与えるための警告に加え、教育訓練、配置転換、降格等が必要とされる傾向がみられる。
*裁判例:ドイツ証券事件(東京地判平成28年6月1日ジャーナル54号39頁)
➤高度な専門性を伴う職務限定では、警告は必要とされるが、教育訓練、配置転換、降格等が必要とされない場合もみられる。

5. その他
*裁判例:大阪労働衛生センター第一病院事件(大阪高判平成11年9月1日労判751号38頁)
 裁判例:スカンジナビア航空事件(東京地決平成7年4月13日労判675号13頁)
➤労働条件の変更に応じないことを理由とする解雇(いわゆる変更解約告知)の効力の判断基準については、過去の裁判例において、 ①の解雇権濫用法理による判断枠組みが示されている。
 なお、②のように異なる判断枠組みを採用した例もみられる。
 ①解雇の意思表示がなされることにより労働者が解雇と労働条件変更の二者択一を迫られることから、解雇権濫用法理(変更解約告知については、労働者側に帰責事由がないことが多いために、整理解雇法理が特に問題になる)によってその効力を判断すべき。
 ②労働条件の変更手段としての性格に即して、解雇権濫用法理とは別個の判断枠組みを用いるべきとして、以下3つの要件を判断基準とすべき。
 ・ 労働条件変更の必要性
 ・ 変更の必要性が労働者の不利益を上回り、労働条件の変更を伴う新契約締結の申込みに応じない労働者を解雇することがやむを得ないこと
 ・ 解雇回避努力が尽くされていること

 

詳細は、下記リンク先にてご確認ください。
無期転換 多様な正社員 雇止め 労働条件 解雇
労働契約法(平成19年法律第128号)|厚生労働省
無期転換ルール及び多様な正社員等の労働契約関係の明確化に関する考え方と裁判例

 

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