障害年金制度の課題に関する検討が行われました
第5回社会保障審議会年金部会が開催され、障害年金制度の課題に関する検討が行われました。
これは、令和元年12月27日「社会保障審議会年金部会における議論の整理」において、障害年金は「社会経済状況の変化に合わせて見直しを行う必要がないか検証し、その結果に基づいた対応についての検討を進めていくべき」とされたのを受けたものです。
委員から提出された資料では、次のように指摘されています。
見直しを要する大きな背景
・制度創設時と比較して、障害年金受給者の障害種別は、外部障害の構成割合が低下し内部障害や精神障害、特に精神障害の構成割合が増加
・近年はインターネットの普及により、精神疾患、難病やがんなども含む様々な傷病で障害年金が受給できるという情報も入手しやすくなった結果、給付対象となることを知らなかった者が、障害の状態に至ってしばらくしてから制度の詳細を知り、その後に障害年金の請求をするケースも存在。一方で、かつてと比べて、若年層が障害年金の受給に繋がりやすくなったと考えられる。
・制度創設時と比較して補装具の発達や障害者雇用の進展が見られ、その結果、障害年金を受給する者であっても、同時に一般就労ができるケースも増加している一方で、障害種別によっては一般就労をしている受給者の割合が低い水準にとどまっており、障害種別間の差が大きくなっている。
その上で、次の6つを課題として挙げています。
初診日関連
→ 初診日が何年も前にあることが増加し、その証明が難しいケースが存在
→ 厚生年金保険料の納付が障害厚生年金に結びつかないケースの存在
→ 初診日のわずかな違いによって、受給できる障害年金に差が生じることがある
→ 過去に厚生年金保険料をどれだけ納付していても、保険事故の発生時点で厚生年金保険の被保険者でなければ、障害厚生年金は支給されない
障害年金受給者の国民年金保険料免除の取扱い
→ 有期認定で障害年金を受給する者の場合、障害の状態が65歳前に軽減し、障害基礎年金の支給が停止されれば、65歳以降は減額された老齢基礎年金を受給することになるが、老齢基礎年金の減額を避けるためには、法定免除が受けられる場合でもそれを選択せずに保険料を自ら納付する必要がある。しかし、保険料を納付したとしても、障害の状態が軽減せずに老後も障害基礎年金を受給できることになれば、納付した保険料はどこにも反映されない。障害基礎年金の支給が停止された段階で追納するという選択肢もあるが、その場合は最大10年分の保険料を追納する必要がある。
直近1年要件
→ 保険料納付要件の特例措置として、令和8年4月1日前に初診日がある場合は、初診日のある月の前々月までの1年間に保険料未納期間がなければ、納付要件を満たしたものとする扱いについて、昭和60年改正から40年近く経過し歴史的な役割を終えているとも考えられる一方で、実態として、この特例措置によって、障害年金の受給に繋がっているケースがあることにも留意する必要がある。
障害基礎年金2級の年金額
→ 受給者が多い2級の障害基礎年金の水準は、老齢基礎年金の満額(40年拠出の老齢基礎年金)で設定されている一方、老齢年金と比較した場合、①受給者の基礎的な消費支出が高くなる可能性がある、②受給者の多くが基礎年金部分しか受給していない、③受給者が公的年金以外の資産形成を受給前に行うことが難しい、④私的年金で公的年金の縮小を補うことが難しい、⑤受給開始年齢の繰下げの選択といった形で年金額を引き上げることができないという特徴がある。両者のバランスを崩さずに、障害基礎年金の年金額を向上させる方法として、基礎年金拠出期間の45年化を満額の変更とする案が挙げられる。
障害年金と就労収入の調整(30条の4以外のケース)
→ 障害年金と就労収入の調整は、まったく行われないか急激に行われるかの両極端になっていて、一方で障害種別間での不公平感を生み、他方で就労阻害の可能性を生んでいる。これを回避するためには、所得額に応じて年金額を緩やかに調整する方法が考えられる。ただし、拠出制年金に所得調査による年金額の調整を入れることには、理論的な観点や実務的な観点から慎重な検討を要する。
事後重症の場合の支給開始時期
→ 事後重症請求が多くなっている一方で、事後重症の場合は、障害の状態が悪化して障害等級に該当するに至った日の翌月ではなく、請求日の翌月から障害年金が支給される形になっているため、請求が遅れた場合に不利益が生じている。
詳細は、下記リンク先にてご確認ください。
障害年金 初診日 保険料免除 就労 保険料納付要件 事後重症
第5回社会保障審議会年金部会
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/nenkin_230626.html