最低賃金引上げの影響に関する調査

日本商工会議所ならびに東京商工会議所から「最低賃金引上げの影響に関する調査」の結果が公表されました。

この調査は、最低賃金について、2016年から2019年まで4年連続で3%台の大幅な引上げが行われてきたことを踏まえ、コロナ禍における中小企業の負担感や経営への影響等を把握し、今後の要望活動に活かしていくために実施されたものです。

具体的には、2021年2月1日~22日までに全国の中小企業6,007社を対象に調査が行われ、3,001社から回答が得られました(回答率:50.0%)。

 

調査結果のポイントは以下のとおりです。

・昨年の最低賃金の全国加重平均額は、コロナ禍による厳しい経済情勢が考慮され、1円の引上げにとどまったが、2016年から2019年まで4年連続で3%台(25円~27円)の大幅な引上げが行われてきた。

・こうした経緯を踏まえ、現在の最低賃金額の負担感について聞いたところ、「負担になっている」(「大いに負担になっている」、「多少負担になっている」の合計)と回答した企業の割合は過半数に達した(55.0%)。

・業種別でみると、特に、コロナ禍で大きな影響を受けている「宿泊・飲食業」では、「負担になっている」と回答した企業の割合は8割に達した(82.0%)。

・また、現在の最低賃金額の経営への影響について聞いたところ、「影響があった」(「大いに影響があった」、「多少は影響があった」の合計)と回答した企業の割合は4割に達した(43.9%)。

・最低賃金額を全国で一元化すべきとの論調に対する考えについて、「反対」(「反対である」、「どちらかと言うと反対である」の合計)と回答した企業の割合は約8割に達した(78.0%)。目安ランク別でみると、Dランク(青森、岩手、秋田、山形、福島、鳥取、島根、愛媛、高知、佐賀、長崎、熊本、大分、宮崎、鹿児島、沖縄)の企業において、「反対」と回答した企業の割合が83.9%と最も高かった。

・仮に、今年、最低賃金が30円の引上げとなった場合の経営への影響について聞いたところ、「影響がある」と回答した企業の割合は6割に達した(63.4%)。

・「影響がある」と回答した企業に対して対応策を聞いたところ、「設備投資の抑制等」(42.1%)が最も多く、次いで、「一時金を削減する」(28.4%)、「非正規社員の採用を抑制する」(24.9%)との回答が多かった。

・したがって、最低賃金の大幅な引上げは、設備投資による生産性向上の阻害要因になることに加え、賃金増に必ずしも直結しないことや採用の抑制につながることがうかがえる。

 

コロナ禍において最低賃金の引き上げにも大きな変化が出てくることが予想されます。