労災保険の特別加入対象が新たに拡大します

労災保険は、通常は企業で雇用されている労働者が補償の対象ですが、災害の発生状況の多い個人事業主に対して加入が認められている労災保険特別加入制度があります。現在、中小事業主や建設業の一人親方、農林漁業の従事者、海外派遣者などが特別加入の対象ですが、4月1日からその対象範囲が拡大されることになります。

新たに対象となるのは以下の業種です。

・芸能従事者……テレビや映画、舞台の俳優・監督・演出家・スタッフ、音楽家など

・アニメーション制作従事者(アニメーター)

・柔道整復師

特に芸能従事者は、業務中のケガや事故が多いことから特別加入の対象になるのを強く希望しており、長年の議論によって認められることになりました。厚生労働省によると、これらの3業種の就業者は約29万人いるとされ、約1万5,000人の加入を想定しています。

また、労災保険特別加入の対象の拡大は、4月1日施行の高年齢者雇用安定法改正によって新設された創業支援等措置の対象者にも適用されることになります。

創業支援等措置は、65歳から70歳までの労働者の就業機会を確保するための高齢者就業確保措置(努力義務)の1つで、雇用によらない措置のため、企業は高齢者との業務委託契約を締結する必要があります。また、措置の実施に関する計画書の作成や、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合はその労働組合、労働組合がない場合は労働者の過半数を代表する者の同意が必要となります。

労災保険特別加入制度では、それぞれの業種の対象者によって組織される特別加入団体(中小事業主の場合は事務処理を委託する労働保険事務組合)に加入し、その団体(または事務組合)を通じて所轄の労働基準監督署に手続きを行うことで補償を受けることができます。したがって、今回新たに加わった業種の加入希望者や高齢者は、既存の特別加入団体に加入または新たに団体を設立する必要があります。